カニクサ
kito*ka-plants
以前住んでいた家の裏庭に2階に住む人のための外階段があったのだが、ある年気がつくと手すりに蔓植物が絡みついていた。
私の身長より高く、2mくらいはあっただろうか。
蔓の下の方の葉は切れ込みがあって細長く、羽のような形をしている。
そして上にいくにしたがって細かい葉になる。そのちりちりとした様子が、観葉植物のアジアンタムに少し似ている気がした。
当時リース作りをしていたので、試しに採取して乾かしてみると1日であっという間にカラカラになった。蔓にニュアンスがあり、作品に動きを与えてくれるのでそれ以来気に入りの素材となった。
はじめは名前も知らずに作品に使っていて、そのあまりの使い勝手の良さに、一体これは?!・・・という流れだったのではなかったか。
シダのような雰囲気なので、確か「蔓性 シダ」といった感じで検索したのだと思う。
そして初めて「カニクサ」という名前であることを知ったのだった。
今年の5月、リース作りを再開するまでしばらくの間、出先で時折見かけることがあっても、横目で眺めながら通り過ぎるだけの日々を送っていた。
ところが先日、手入れをさせてもらっている庭でドクダミを間引いていたら、下から不意にカニクサが現れた。
久しぶりだね。元気だった?!
そう声をかけたくなった。会えてとても嬉しかった。
2枝ほど持ち帰り乾かしてみると、梅雨なのに半日でおおかた乾いてしまう。
早速紫陽花やパンジーと共にリースに仕立ててみた。
リースの円から跳ねるように飛び出てているのがカニクサ。
カニクサがあるのとないのとでは雰囲気がだいぶ違う。
名前の由来は、子供がその蔓を使って蟹を釣ったから。
その程度の知識だけで、どんな植物なのか深くは知らなかった。
表面上の付き合いだけしてきた友人、そのバックボーンを知らずに過ごした時間が少しもったいなかったような・・・そんな気持になる。
カニクサはシダの仲間。
実は日本に生育している蔓性のシダというのは八重山諸島に生育するイリオモテシャミセンヅルとカニクサの2種類とのこと。
日本列島ではカニクサが唯一蔓性のシダなのだそうだ。
そしてこの蔓、実は茎ではなく葉っぱの真ん中にある主軸であり、蔓一本が一枚の葉であるという。
下の方の細長い葉も、上の方のちりちりと細かい葉も別の葉ではなく、それぞれが一枚の葉の一部という、ちょっと訳の分からない不思議な植物なのだった。
葉の形の違いは役割の違いらしく、ちりちりとした葉は裏に胞子がつく繁殖を目的とした「胞子葉」、下の方の細長い葉は光合成をし栄養を作る「栄養葉」ということだ。
夏から秋にかけて胞子葉を紙袋に入れ揉み、胞子だけを集めたものを「海金砂(カイキンシャ)」と呼ぶ。
これは淋病、利尿の薬になるとのこと。サソリの毒消しにも用いられるらしい。
Lygodes はギリシャ語で「柔軟な」
英名 Japanese climbing fern (日本の巻きついて登るシダという意味)